
Bar美術の扉
写実主義の代表画家
クールベ
「わたしに天使を描けというなら、天使を見せてくれ」と語ったクールベは、過去の美術や空想の世界にとらわれず、身近な現実をありのままに描き出しました。労働者や農民の生活、自然の姿を忠実に絵画の中に再現しようとしたのです。

「画家のアトリエ」
この絵には、「私のアトリエの内部、わが7年間の芸術的な生涯を要約する現実的寓意」という長い副題が付けられており、描かれている全員がなんらかの寓意を表しているとされています。
そして、この絵はクールベ自身を取り巻く社会自体を描いた絵だと言われています。
右側に描かれた人物達は、ボードレールやシャンフルーリ、美術愛好家など彼を理解している友人や仲間が描かれています。
逆に左側のみすぼらしい恰好をした人物は貧困や悲惨さ、搾取などを象徴しているものになっています。
クールベは技法としての写実性もさることながら、当時の社会の写実性にもこだわり作品を描いたことが伺えます。

「オルナンの埋葬」
この「オルナンの埋葬」は革命的な絵です。
なぜ革命的なのか?
それは田舎の葬式を大画面に描いたことです。
英雄もいない、 聖書のシーンでもない、壮大なドラマも展開しない、くたびれた農民の埋葬風景を7メートルの大作に描いたのです。

そしてこの絵が一番有名かもしれません。
タイトルは「世界の起源」です。
ミレー
ミレーも当時のフランス国民の大半を占めた農民達の生活や姿に主題を見出した画家です。
ミレーが描いた農村の風景や人々は、みんな信心深く、素朴で働き者です。

「落穂拾い」
この作品は社会の底辺にいる労働者達の生活を描き出しており、画中の三人の女性は農作業の終わった後の畑で、残った穀物を拾う作業をしている「落穂拾い」の人々を表現しています。「落穂拾い」は、収穫後の小麦を拾うことで生計を立てる最も貧しい者達の労働を指します。
背後には豊かな収穫から直接利益を得る農場の主と、穀物を収穫するための労働者達がおり、これは社会の階級間の格差を象徴的に表すものです。
ミレーが尊厳と慎ましさを持って描いた落穂拾いの女性達は、田舎の生活の厳しさと清貧な美しさを伝えています。彼女たちの積極的な姿勢は、最も低い社会地位にもかかわらず尊厳を保ち続ける労働者階級の象徴とも解釈できます。
この作品はその社会的メッセージから賛否両論を巻き起こし、ミレーのキャリアを通じて最も重要な作品の一つとされています。

「晩鐘」
この作品では、女性の右肩奥に見える教会の鐘の音が鳴り響く中、一日の農作業を終えた夫婦が祈りを捧げています。前景は痩せた土地で収穫はジャガイモのみだとわかります。それでも、収穫があったことに感謝の祈りを捧げているのです。
この主題は、ミレー自身が幼い頃に祖母達とともに捧げた祈りを思い出して描いたとされています。

ダリ作「たそがれの隔世遺伝」
後世、20世紀美術のシュルレアリスムの画家サルバドール・ダリは、ミレーの晩鐘の男性を交尾の後に栄養となるためメスに食べられる運命のオスのカマキリに見立て、これからのことを考え勃起した股間を帽子で隠しているという独特な解釈を行い、それに基づいて「たそがれの隔世遺伝」を制作しました。

「種まく人」
こちらの「種まく人」もミレーの代表作です。
肩に種袋をかけ脚には寒さを防ぐための藁を巻きつけた農民が、夕暮れの丘を大股で下りながら冬小麦をまいており、ミレーが描いたのはそんな農民の力強く雄大な姿でした。
この絵は農作業に宿る尊厳、さらには英雄的とも言える精神性を表現しています。
そして後年のポスト印象主義の画家ゴッホは貧しい人々の生活に共感していたため、農民の質素でつつましい生活風景を描く「農民画家」のミレーが大好きでした。ミレーが描いた「種まく人」を真似し、さらにそこからインスピレーションを得て自分自身の「種まく人」を何枚も描いています。

ゴッホ作「種まく人」
その中でもこの「種まく人」は、日曜美術館で紹介されたその瞬間から私の心を強烈に奪った作品です。
牧師、そして伝道師になる夢破れたゴッホが、絵を描く行為に託した希望、「神の言葉を種蒔く人になりたい」と言う想いで描いた作品です。
精神病もあり亡くなるまでの後半の作品はゴッホのつらさが伝わってくる作品が多いですが、この作品は希望に満ち溢れています。
ドーミエ
ドーミエは批判・風刺の目を持った社会派リアリズムの画家です。
ミレーが農民を見つめた画家ならば、ドーミエは都会の生活を通してリアリズムを描いた画家で、権力に対する批判的感情をこめて貧困に苦しむ人々や都市の労働者たちを描きあげました。
美を追求するのではなく、ありのままの情景を切りとった写実的な視点と、情念のこもった描写が特徴的です。

「洗濯女」
こちらは代表作の「洗濯女」で、絵から母親の力強さと優しさが滲み出ており、都市で暮らす貧しい人々の姿が深い愛情とともに力強く描かれています。

「三等列車」
ドーミエは産業革命によって移り変わる交通手段を主題とした絵画を多く描き、この「三等列車」もそのひとつです。
三等車は車窓から光が入り、人でごった返し、汚く、固い椅子が並べられており、座席は一等、二等の席が買えなかった者で埋め尽くされています。
乳飲み子を抱えた母親、バスケットの取っ手を握りしめる年老いた女、ぐっすり眠る少年。三世代が同時に座っており、まるで人生の縮図を表しているようです。成人した男性は後ろ姿のみで脇役で、これは女性が自分の世界を切り開こうとしていることを示唆しています。母親の顔は優しいですが、年老いた女の表情は疲れ切っており、長い人生の中で経験したであろう苦難を物語っています。
ドーミエならではの観察眼の鋭さと暖かい共感をもって、乗客の内部に焦点を当てた作品です。