Bar美術の扉

遠い異国への憧れや中世の空想的な物語、自然の神秘的な光景などに興味を持ち、より自由な表現の美術を目指す人々が現れます。
そして道徳よりも感情表現を重視する想像力豊かな芸術作品が数多く生み出されました。
「絵を見て感動する」ということがロマン主義の画家たちの豊かな想像力によって確立されました。
題材には聖書に代わり時事的な事件や小説のエピソード、またオリエント風などの異国趣味が選ばれました。
1819年、ジェリコーがロマン主義をはっきりと打ち出した「メデュース号の筏」をサロンに発表します。

この作品は、フランスの軍艦が沈没した後、筏で漂流した生存者たちの生々しいエピソードを描いたもので、ロマン主義的テーマのビジュアル化といえます。
ロマン主義の代表画家ドラクロワ!!
彼もルーベンス風(フランドル・バロックの巨匠)の劇的な表現を目指し、正確な写実よりも、動きの激しい筆致と大胆な色彩で情熱的な画風を作り上げます。

この「民衆を導く自由の女神」という有名な作品は、1830年にフランスで起きた七月革命の民衆蜂起を描いたものです。
市街戦で指揮を執っている女性は人間の姿形をとった抽象概念です。
本作の正確なタイトルは「民衆を導く<自由>」です。
擬人像「自由」は従来フリジア帽(先端の垂れた円錐形の帽子)をかぶった女性として描かれるのが決まりです。
ここに描かれた「自由」もフリジア帽をかぶり、硝煙たちこめる中、左手に銃剣を握って、逞しい右腕で高々と三色旗を掲げています。
現代のフランス国旗となる、青・白・赤のトリコロール・カラーで、それぞれ「自由」「平等」「博愛」の意味を持ちます。
ライフル銃やピストルやサーベルで武装した人々がさまざまな階級ーパリ特有の浮浪少年から、労働者、学生、小ブルジョワまでーだということが、やはり帽子で示されています。布の被り物、ベレー帽、三角帽、シルクハット、後景には軍帽まで見え、軍の中からも民衆側へ寝返る者が大勢いた事実を物語っています。
この時の民衆の気持ちを思うと胸が熱くなる歴史の一場面をドラマチックに描いて後世に残したドラクロワの功績は偉大です。
フランスの歴史小説レ・ミゼラブルの登場人物ガヴローシュは女神の右前にいる少年にヒントを得て書かれたといわれています。
ちなみに自由の女神と言えば思い浮かぶのはアメリカではありませんか?
アメリカのシンボルである自由の女神像は、アメリカの独立100周年を記念して独立運動を支援したフランス人の募金によって贈呈され1886年に完成し、ニューヨークのリバティ島(自由島の意)に立っています。
ドラクロワの「民衆を導く<自由>」を彷彿とさせる、アメリカの自由と民主主義の象徴です。